現実主義者
システム?それはどういう…
仏教者
昔、ケインズ経済学がもてはやされたころ、よく言われた冗談とも本気ともつかない話として、こういうのがあったのをみんな知ってるでしょう。
不景気な世の中で、失業者がなにもせずに生きてゆくわけにはいかないし、景気もますます悪くなるから、意味のない無駄な仕事をでっちあげてでも人々を働かせろと。つまり、させる仕事がなかったら、極端な話、地面に穴を掘らせ、掘れたら、また埋めさせるようなことをさせても、それは失業者を減らし景気を良くするために、なにもしないより効果があるんだ、という話です。
もちろん、こんな極論は経済学的にも正しいとはいえないが、今ぼくが言いたいのは、この話がもう一段上のレベルで人間存在の社会における状態をあらわす、ぴったりの比喩になるということなんです。
つまり、社会のいわゆる仕事なるものは、人間が本当にすべき仕事ではなく、もともと大部分この地面に穴を掘って埋める徒労めいたものだといえるんです。
人生の失業者を見掛け上減らし、社会をいたずらに景気づけ、平均人が
(さあいよいよ死ぬという、その時まで)
死を忘れていられるように、何者かが設けた巨大なシステムだ。
現実主義者
何者かって…誰なんです?
仏教者
人類全体が共犯関係(笑)
キリスト者
平均人は、人間だけが持てる根源的不安を、たんなる気の迷いくらいに思いたがっていますね。
現実主義者
ああ、そういうことか…確かに、互いにある種の気がかりには触れないでおこうという、意識されない暗黙の了解みたいなのはあるかもしれない。でも、それは人間の優れた下意識の知恵だと、ぼくは思いますね。
司会者
このへんで、いったん休憩を入れたいと思います。
現実主義者
やっぱり、全然まとまらなかったな(笑)
キリスト者
さっきから、おなじ場所で、ぐるぐる循環してますね(笑)
仏教者
この種の問題の場合、循環するのは議論が正しく行われている証拠です。
そういうことにしておきましょうよ(笑)
(休憩後、続く)
(My Favorite Songs)
(過去記事統合増補編集再録)