哲学日記

存在の意味について、日々思いついたことを書き綴ったものです。 このテーマに興味のある方だけ見てください。 (とはいえ、途中から懐かしいロック、日々雑感等の増量剤をまぜてふやけた味になってます)

架空対談12

仏教者
人生は、すばらしい。その美しさ、麗しさは賛嘆に値する。
しかし、人の死なねばならぬ宿命が、そのすべての輝かしさを灰色に塗りつぶしてしまう。
死とは、人間にとって最大の不可解なパラドックスです。


現実主義者
それはもちろんよく分かるよ。
この世のどんな華々しい成功者も死ぬときは寂しいもんだもの。
だいたい、人に最も強い自信を与えるのは、自分の思想・信念が世界を整合的に把握しているものだという確信でしょう。
生きている間はその証明が常にあり、会心の笑みを絶やさないほどの成功者でも、そのすべての勝利は死を前にしてすっかり色あせてしまう。
がっかりさせるよなあ(笑)


仏教者
しかしね、たとえば人が死ぬのを見せられるたびに、なにか自分に冷水をかけられたような、力が盗まれるような気分になるとしたら、それは自分がまちがった生き方をしているからなんだよ。
人は死のわなをのりこえて、究極の勝者になるべきですよ。


現実主義者
そんなあなた、のりこえたくても人はせいぜい百年前後で寿命が来ちゃうもの(笑)


キリスト者
人が百年前後で死ぬということは、精神にとってはまったくの偶然にしか過ぎないと思います。


現実主義者
ウッ(笑)
万人の上にある冷然たる事実は、これを必然というべきだと思いますけど。


仏教者
あなたは、なかなか頑固だ(笑)


現実主義者
ぼくは、むしろ、こういうことは認めますよ。
つまり「自分はまもなく死ぬのだ」と思って生きるのが、ある種の人々にとっては、テクニックとしてかなりいい生き方になるってことです。


キリスト者
「明日死ぬつもりで今日を生きる」ですね。





(続く)