悲しいかな、われら一念に悟れば直にこれ仏となるを知らずして、却って一念迷うが故に、自ら凡夫となりさがる。
かくも尊き仏法を耳にしつつも、一向に信心帰依の心なく、生死の海に浮沈して、三毒五欲の妄念と憎愛取捨の迷執に、日夜造業造作して、永劫出離の際もなし。
たまたま信心おこせども、自心仏と知らざれば、ただ徒らに狂奔し、
憐れというも愚かなり。
(宗門安心章第二 自覚安心)
修行が進まないのは、自分を信じないからだ。
自分を信じられないのは、心の底に恐れがあるのに、それを不誠実な態度でごまかしているからだ。
心の恐れを、ごまかさずにいられないのは
「人は死んでも、自分だけは死なない」と思っているからだ。
嘘を信じようと無理をするから、自信がもてなくなり、
自灯明の人生を歩む
ことが根底的にできなくなっている。
「虎の尾を踏む男達」
「素晴らしき日曜日」
「白痴」
黒沢監督の初期の作だが、よい出来とはいいがたい。「素晴らしき日曜日」は奇妙な味がある。「虎の尾を踏む男達」(勧進帳の話)が終戦の年の制作にもかかわらずもっともましに仕上がっている。