男の助平心は死ぬまで治らん、悟って煩悩を滅するなど
絵空事(つまり聖者などいない)というのが谷崎の生涯変わらぬ確信で、根底から
ブッダをペテン師とみなすことにおいて谷崎は
本居宣長と双璧をなす人物だとおもう。この作品はその谷崎の思想が気持ちいいほど端的むき出しに表現されている名作だ。
谷崎の説は、修行を積んで空を自在に飛べるようになった久米の仙人が洗濯女の太腿を見て墜落したという話と同様で、昔から大衆に好まれ支持される。
悟る修行なんて無駄は止めて美女に身を捧げるM男になれという谷崎式解決策は過激で大衆的ではないから、一部の男女が熱烈支持するに止まっているが。