ここを捨ててどこへ行く
実物さえあれば言葉は自由自在に表現できる。しかし言葉は実物ではない。言葉の中に実物があるなら、「火、火」と言うたら舌は火傷し、「酒、酒」と言うたら酔っぱらうじゃろうが、しかしそうはゆかんじゃないか。
実物のないものは、何と言うてもダメである。理屈をどう言うてもダメじゃ。言葉は言葉だけのものである。
わしは西田幾太郎の本もよう読んだが、「ただ新しい言葉を発見するだけなんだな」と思った。
ホトケに成りたい?ホトケになんぞ、ならいでいいんじゃ。
今が今、自分が自分すればいいんじゃ。
ここを捨ててどこへ行くというんじゃ。
(禅に聞け 澤木興道老師の言葉 櫛谷 宗則編)