哲学日記

存在の意味について、日々思いついたことを書き綴ったものです。 このテーマに興味のある方だけ見てください。 (とはいえ、途中から懐かしいロック、日々雑感等の増量剤をまぜてふやけた味になってます)

架空対談6

キリスト者
しかし、人は昔いじめられた仕返しをしたいという欲だけで、そこまで愚かにならないと思うな。


現実主義者
もちろん多くの人達にとって当面の問題は、経済的悪条件からくる生存の不安が精神を萎縮させていることでしょう。
現代日本のように、じっさいに飢え死にするような状況がほぼなくなっても、最悪の場合ありうるというだけで、あるいは妄想でさえ十分強力な影響を人に与えますよ。
大人になって、経済的不安がなくなった人達の精神にも、昔の不安はとりついているしね。


キリスト者
なんにでも興味を持つけど、その興味が全部自分の外側にしか向かわない人っているでしょう。
そんな人の多くは、その内部に経済的不安があるんじゃないか。
それが精神を萎縮させて、人生が第二義に堕している。
その妄想的不安を消すために、無理やりでっち上げむなしく飾り立てた仕事、言葉、交通があまりにも多くあふれている。


仏教者
テレビの番組を見てれば、それはすぐ分かる。
たいがいは、自分でもどうだっていいのにと思っていることを、わざとらしく、いわくありげにあつかっている。
しゃべる間だけ、無理にでもその対象に興味をもとうと必死になる。関心を持っているふりをしている。


現実主義者
仕事ですからね。みな、生活のため、女房子供を食わせるためにがんばっているんですよ。


キリスト者
みんな、その、生活のためという「大義」をうわごとのようにくりかえし思っている。


仏教者
そうやって、世の中全体はやたらに肥大したぶよぶよの腐った脂肪の塊のようなものになってしまう。


キリスト者
その塊のなかで、みながこう言う。「おれは精一杯やっている。誰からも文句をいわれる筋合いはない」


現実主義者
そのように言うこと自体は、別にまちがってないでしょう。ぼくだってそう言いますよ。


キリスト者
問題は、その生活が第二義に堕している事実に本人が気づいていないことです。
そういう人は、ある程度の経済的余裕と世間的な評判の良さに支えられていれば、内面生活も落ち着き、満たされてしまう。


仏教者
それを逆にいうと、第二義に堕している人生の悩みは、金さえあればたいてい解決する。そういう悩みしか感じなくなってしまう。
一等宝くじが当たればなくなる悩み(笑)


現実主義者
だけど、やがて貧乏人が自分の命を10年分金持ちに渡して金をもらう時代がSFじゃなく来ますよ。
科学技術がそれを、やがて可能にするのは確実だと思う。
そうなれば、死の悩みさえ金で解決できる時代が…


キリスト者
ぜんぜんそうは思いません。人間の百年の寿命が千年になったところで、事態は少しも変わりはしない。




(続く)